悩める研修医の皆さんこんにちは! 毎度おなじみ人生ライフ向上塾のお時間がやって参りました。さて、4回にわたるバーンアウト問題も、今回が最後です。このコラムも時にはシリアス・真面目路線を狙っていきますよ! 今回は、バーンアウト後の医師人生問題です。

ある意味病気を抱えるよりも悩ましい、医療者のバーンアウト
 真面目な人がバーンアウトによって脱人格化し、情緒的消耗を来すと、その完璧主義が裏目にでるのか、研修医ライフに限らず、その後の医師人生全体にまで極端に脱人格化した考えを持つようになることがあります。

 つまり、とたんに医療に対してシニカルな見方や、行動、態度を取るようになります。学生時代に熱心だった 、真面目だったあの人が、「え? なぜ今そんなキャリアを…?」と思うことが時にあるんですな。これほど悲しいことはありませんよ。

あんだけ熱かったのに、とたんにシニカルになった人の例

「○○科とか、コスパ悪いっしょ(笑)」
「まあ、今の仕事はね…。日銭稼ぎっていうか、生活のためだから」
「勤務医とか、今時負け組だから(笑)。資本主義では資本家以外は、負けなの」

 職業人生とはそれはそれは途方もないマラソンのようなもんなんです。皆さんも私も、日々の医療でまだいっぱいいっぱいで、見失いがちかもしれませんが、医師人生は意外と長いんです。そんな中でね、ぶっちゃけ、毎日100点を出せる世界ではありませんし、しっかり準備しても理不尽な目にあうこともしばしばです。そして、これからはやれコンプライアンスだの、人工知能(AI)との競争や共生だの、医師の働き方も定義が日々更新されるややこしい時代なんですよね…。

 そんな時代に、私たちは、燃え尽きず、どのように人生ライフを生きるのがハッピーなんですかねえ。私も悶々と悩んでました。目の前のことをおろそかにしながら、無駄に悩んでました

 産業医が教えられた、燃え尽きない生き生きとした働き方
さて、悶々としながら、産業医として様々な理系労働者を見続ける日々を何年間も過ごしましたとさ。ネタバレからいきます。私が到達した答えは、「淡々と10年1つの分野で働きつづけると、大抵ハッピー」という、なんともベタなものでした。

 以前、最高速度が時速120キロだとして、「時速60キロで10年、20年、30年走ることで見える医師道がある」 とお話ししましたよね。おそらく10年目以降のベテランドクターには賛同いただけるでしょう。一方、医学生や若手医師には「そんなちんたらした人生送りたくねー!」と賛同いただけないでしょうね(笑)。若者は得てして大局観を抱けないものですから、淡々と積み重ねるという、そのすごさが分からないんですな。

 いや、お前だって分かんねえだろ?ってツッコミが聞こえますが、むしろ、産業医である、精神科医である、私だからこそ、分かるんですよ。

 私は産業医として、数多くの労働者と対話をしてきました。一時期は年1000回を優に超えましたし、ある会社では1年かけて全社員と面談するシステムもありました。都心の一流企業から、茨城県内の中小企業、官公庁も含めて、本当に様々な組織と、職業人を見てきました。

 そのなかで、とても印象深い職業人たちがいました。定年を迎える多くの理系技術者たちです。「組織内で、自分はコレ!と言えるものを見つけて、それを淡々と30年以上重ねてきた」人がもつ、清々しい表情。組織の大小や、給与の多寡に関わらず、みな、清々しく見えたのです。

 中には賃金が大幅に下がることを承知の上で、しかも元々の部下の下で働く契約社員というポジションになることを承知で、定年後再雇用を選ぶ方も少なくありませんでした。

 私が、「(待遇に)不満もあるでしょうが…」と少しためらいながら共感的態度を示すと、多くの方から意外な反応が返ってきます。

「いやいや、むしろ地位がなくなって、せいせいしますよ。これからは好きなことだけ、自分のペースでできますから」
「お金はね、確かに少ないけれど、まあ、会社への恩返しみたいなもんです」

 「ああ、これが技術専門職の幸福だな…」と私は直観しました。産業医という専門家の私が、専門家の大先輩である彼らから教えられました。