4月にスタートを切った新専門医制度。各基本領域について、専門研修プログラムの初年度の体制をシリーズで紹介する。


【内科領域】
・2018年度 研修プログラム数:542プログラム(1842施設)
・2018年度 総定員数:5800人
・2018年度 採用者数:2671人(2018年3月15日時点)

「内科全体で見ると大幅な減少はなかった」と説明する日本内科学会認定医制度審議会の横山彰仁氏(高知大血液・呼吸器内科教授)。

 内科専門研修プログラムの2018年度の採用数は2671人(3月15日時点)。新制度導入による影響を懸念する声は強く、2017年12月の一次登録数の発表後には過去の認定内科医試験の受験者数と比べ、大幅に研修医数が減少したのではないかという指摘も寄せられていた(関連記事)。

 だが、「全専攻医の約3割が内科領域を選んでおり、例年の研修医数と比べて大きな差はなく、同程度か微減に留まっていた」と日本内科学会認定医制度審議会の横山彰仁氏(高知大学血液・呼吸器内科教授)は説明する。新制度導入により、大きな混乱が生じていたことを加味すると、「採用数の増減を明確に検証するのは難しく、厳しい状況にある地域があるのは事実。しかし、内科全体で見ると大幅な減少はなく、専攻医の数を一定数保てたと考えている」と話す。

 新専門医制度の導入に伴い、内科領域の研修制度は、一定の経験年数や症例数、筆記試験で専門医資格を得ていたカリキュラム制から、プログラム制へと大きく仕組みを変えた。基本領域はプログラム制が必須になったことによる対応だが、「特に2004年以降、内科認定医制度は、基本領域の専門医資格取得後に研修を積むサブスペシャリティー領域の研修に偏り、様々な内科疾患を鑑別診断・治療できる本来の在るべき内科医像を育てる仕組みからは外れていた」と横山氏。複数疾患を抱えた高齢者が増える日本の疾病構造の変化を見据え、「新制度導入に伴い、臓器横断的に全身を診られる内科医の育成を目指す本来の内科研修に戻すことを決め、研修制度を大きく変更した」と説明する。

専攻医のキャリアプランに合わせた仕組みに

 内科領域の専攻医には、専門性に特化した研修を早く積みたい医師と、複数の臓器にまたがる広い領域の研修を望む医師がいる。そのため、新専門医制度の導入に伴い、サブスペシャリティー領域の専門医資格の取得時期が遅れるのではないかという指摘や、基本領域の研修に各科ローテーションは必修なのかといった質問が日本内科学会に多く寄せられたという。

 そこで日本内科学会は専攻医の描く多様なキャリアプランに合わせた研修制度にするため、基本領域の研修について複数診療科のローテーションは必修としない方針を決めた。また、新制度でも旧制度と同じ研修期間(最短4年)で、サブスペシャリティー領域の専門医資格を取れる仕組みを構築した(関連記事)。「できるだけ早くサブスペシャリティー領域の研修を積みたいという要望に応えるため、日本専門医機構と協議し、基本領域の資格を取得するまでの期間は他の基本領域と同様に3年間としながら、一部のサブスペシャリティー領域については同時に研修を積める仕組みを設けた」と横山氏は説明する。

 とはいえ、新専門医制度導入前にサブスペシャリティー領域の専門医資格を最短で取得していたのは「全体の1〜2割程度だった」という。大半の医師はより多くの時間を掛けて専門医資格を取得していたため「プログラム制にしたことで、今後は逆に最短期間で専門医資格を取得しようとする人が増えるのではないか」と横山氏は見る。ただし、「示しているのはあくまで最短での研修期間。その期間で専門医資格を取得しなければならないわけではない。それぞれのキャリアプランに合わせて研修を積んでほしい」と話す。

研修プログラムごとに指導の質を評価

 また、新たな研修制度への転換に伴い、研修の質の低下を危惧する意見も示されていた。それを受け、内科領域では「研修の質の向上を目指す仕組みを取り入れる予定」と横山氏は話す。

 新専門医制度では、研修の質を担保する目的で、研修内容の記録が求められている。そこで、日本内科学会は紙の研修手帳の代わりに、研修と指導内容を記録するためのウェブ版の研修手帳システム「J-OSLER」を独自に作成。専攻医が経験症例を登録し、指導医が評価すると、その研修状況の進捗をプログラム責任者や学会側が把握できる仕組みを構築したのだ。さらに、指導環境を評価するために「専攻医の報告に対して指導医がレスポンスをした時間や指導内容の概要について、記録できる仕組みを設けた」と言う。

 内科領域の専門医試験では以前から、受験する医師に経験した症例の病歴要約などの提出を求めていた。通常、症例の病歴要約は研修医がまとめ、それを基に施設の指導医が研修医を指導し、修正を加えた後に学会に提出するものとしていた。しかし、一部の研修施設では指導医が十分な確認をしないまま病歴要約の質が伴わず不合格になっていたりする研修医が一定数いたのだという。

 今回、J-OSLERを導入することで、指導環境が不適切なものとなっていないのかをチェックすることが可能となり、指導環境の向上への期待を寄せている。指導医には「早いレスポンスを求めるというよりも、せめて1週間以上の間を空けずに指導をしてほしいという思いがある」と横山氏。

 さらに、今後はプログラムごとの研修の動向・試験の受験状況が明らかになる。「指導状況と内科専門研修終了時期など、研修プログラムの質も見えやすくなる。学会として指導に関する情報を一部公表するなどして、内科全体としての研修プログラムの質向上を目指していきたい」と話す。

 一方で、「指導医に過剰な負担を強いることのないように配慮は重ねていきたい」とも言う。指導医が専攻医を指導するのは当然としつつも、「事務作業が増えすぎないよう、症例や指導状況の記録は簡便にできる仕組みにしたい。学会員の意見を随時聞きつつ、調整を重ねていきたい」と横山氏は話す。

 今後について、「新専門医制度の導入により、様々な混乱の影響を受けたが、研修の質を向上する仕組みが作れたことは、結果として良かったのではないかと捉えている。学会として、研修環境の向上を継続的に求めていきたい」と横山氏は意気込む。