【外科領域】
・2018年度 研修プログラム数:204プログラム(2005施設)
・2018年度 総定員数:2044人
・2018年度 採用者数:805人(3月末時点確定分)

「外科医のやり甲斐が社会的にも評価されるよう、学会としても働きかけていく」と語る日本外科学会理事長の森正樹氏(大阪大消化器外科教授)

 外科専門研修プログラムの2018年度の採用数は805人(3月末時点)。外科研修を始めた後期研修医の過去5年の推計と比較して、「外科に進む医師の減少が続いている」と日本外科学会理事長の森正樹氏(大阪大学大学院医学系研究科消化器外科学教授)は語る。その減少は新専門医制度の導入による影響ではなく、「これまでの外科医の減少傾向の延長線にある」と森氏は見る。

 外科専攻医の採用状況を地域別に見ると、805人中379人が5都府県(東京、神奈川、愛知、大阪、福岡)に基幹施設を置く研修プログラムへの採用で、中でも東京は176人を占めている。ただし、外科の場合、研修プログラムの多くが都道府県をまたぐ広域の病院群で構成されており、176人のうち都内で研修を行う正味の専攻医数は103人で、73人は都外で研修を行う見通しと外科学会では試算している。この正味の専攻医数と、人口比率やNational Clinical Database(NCD)登録数、指導医数を比べると、東京への集中は他府県の1.2倍程度。外科領域は5都府県のシーリング(過去5年間の専攻医の採用実績平均を超えないという制限)の対象にはなっていないが、専攻医の都市部への極端な集中は見られなかったと結論している。

 もっとも、専攻医の採用が5人未満という県は10県。他の都道府県のプログラムからの配置を調整するなどの工夫は「喫緊の課題」(森氏)という。

サブスペシャリティー6領域は外科専門医も自動更新の方針

 これまでの学会専門医の研修と新制度における研修プログラムを比較すると、専攻医が習得すべき項目について、変更点はほとんどない。経験症例や手術の記録はNCDデータを活用。さらに、専攻医と指導サイド(プログラム統括責任者、指導医)の双方が研修の状況をリアルタイムで確認し、相方向の評価も可能なWebシステムを構築した。このシステムの使用料は無料だが、使用には日本外科学会会員であることが条件となる。

 研修修了後の専門医試験については、2018年度に新制度で研修を始めた専攻医が受験を始める2021年度に合わせて若干の見直しを加える方針だ。まず、現在は受験者数の一定割合としている相対評価の合格基準を、試験の正答率による絶対評価に変える方向で検討が進んでいるという。また、従来の外科専門医試験で行っていた面接試験はなくす方針。「プログラム制になったことで、専攻医の人物や技量については研修プログラムの責任者が様々な機会で確認することになるので、改めての確認は不要になるだろう」(森氏)という考えからだ。

 現在の外科専門医資格から日本専門医機構認定専門医への更新は、2021年度からの実施を予定して検討中だ。他の領域と同様、各種講習会の受講などによって取得する単位が細分化される。なお、更新に求められる手術経験数については、4回目以降の更新は免除を受けることも可能とする。「4回目の更新を行うくらいの年代になると、院長・副院長などの管理職となっていて、手術執刀数が減る外科医も多い。しかし、それまでのキャリアを手術以外の臨床、あるいは後進外科医の教育に生かしてもらいたいという意味がある」と森氏は語る。

 外科のサブスペシャリティーは現在、6領域(消化器外科、心臓血管外科、呼吸器外科、小児外科、乳腺、内分泌外科)が専門医機構から認められている。これら6領域とは、外科研修期間における手術実績などをその後のサブスペシャリティー研修でも実績として連動できる仕組みが設けられる予定だ。また、これらのサブスペシャリティーは5年ごとの更新となる見込みだが、いずれかの専門医資格を更新すれば、基本領域となる外科専門医の資格も自動的に更新できる仕組みとするよう調整を進める方針だ。

 このほか、感染症や消化器内視鏡なども外科を基本領域の一つとする方向で検討中。ただ、上記6領域のサブスペシャリティーとは異なり、外科研修中の実績の活用、外科専門医資格の自動更新などの連動は行わない方針だ。

外科医を取り巻く問題に学会として取り組む

 上述のように、外科を志望する医師の増減に新専門医制度の影響はないと見られるものの、減少傾向は続いている。そのため、日本外科学会は外科医を取り巻く構造的な問題への対応の検討も進めている。例えば、理事長の森氏が自ら委員長を務める将来計画委員会では、万全を尽くしてもゼロにはできない外科手術のリスクを全体で担保する仕組み、外科医の働き方を改善するための方策について検討し、国会議員など各方面に訴えていくという。「学会として外科の魅力を伝えるため、いっそうの努力が必要。自分の理事長の任期中にある程度のめどを立てたい」と森氏は語る。

 新制度による研修プログラムが動き出したら、様々な問題や不具合が明らかになると予想されるが、「学会として、早め早めに手を打っていく方針」(森氏)。ただ、外科専攻医の採用状況や研修を行う場所は新制度によって初めて可視化されることになり、そのデータは外科医の地域偏在対策にも使われることになるだろう。

 「外科は自分の手で治すという実感を持てる領域。減少傾向の中にあっても、外科医は皆、やり甲斐を持って日々の診療をがんばっている。そのやり甲斐が社会的にも評価されるよう、学会としても働きかけていく」。若手医師、医学生に森氏はこうアピールする。