4月にスタートを切った新専門医制度。各基本領域について、専門研修プログラムの初年度の体制をシリーズで紹介する。


【整形外科領域】
・2018年度 研修プログラム数:156プログラム(2005施設)
・2018年度 総定員数:1054人
・2018年度 採用者数:550人(3月末時点確定分)

 2018年度の整形外科領域の研修プログラム数は156、採用者数は550人だった。この結果について、「昨年度に始めた暫定プログラムの採用者数は551人。大きな変化はなかったと捉えられる」と日本整形外科学会副理事長の大川淳氏(東京医科歯科大学病院長)は語る。

 整形外科領域では新専門医制度の導入に伴い、研修プログラム整備基準で、大学で6カ月以上の研修を専攻医に課している。これは、しっかりと研修環境が整っている場所で知識と技術を身に付けてもらいたいという考えに基づくもの(過去記事)。だが、それゆえに、「大学中心の研修になっている」「大学以外の医療機関が基幹施設となっている研修プログラムが少ない」といった多くの批判を浴びてきた。こうした意見を受け、整形外科領域では大学以外の医療機関が基幹施設となる研修プログラムを昨夏から約50増やす対応を取った。

「専攻医は教育環境が整っている施設で研修を積むべき」と主張する日本整形外科学会副理事長の大川淳氏(東京医科歯科大学病院長)。

 「専門医制度は育成のための仕組みだ。特に外科系の領域では最初の3〜4年の研修は入り口のレベル。10年程度経験を積まなければ、その領域の専門医としては働けない。一人前になっていない時点で、育成環境が整っていないところに行かせるべきではないはずだ」と大川氏は説明する。

 大学での研修を必須にしていることについて、多くの批判を受けているが、「大学での研修期間は短ければ半年のみ。それ以外の期間は一般病院で研修を行うことになる。大学中心の研修プログラムと言われるが、実際はそんなことはない」と大川氏は反論する。

 いくら大学が多くの専攻医を採用しようとしても、人件費の面でそれは困難なのだという。「給与は、専攻医が研修のために所属している医療機関から支払われるべきもの。だが、大学として支払える人件費には限界がある。専攻医を無尽蔵に受け入れるわけにはいかないので、結局は他の医療機関と組んでローテーションをする仕組みになる」と説明。実際に、整形外科領域全体で最初の半年に大学に所属している専攻医は3割程度。7割は市中の医療機関や連携病院で研修を積んでいるという。

 また、「多くの批判や指摘を受け、多くの医療機関や学会員の協力の下で、大学以外の医療機関を基幹施設とした研修プログラムを作成したが、研修の質や実績を重視したのか、結局は以前からある研修プログラムに専攻医は集まっていた。制度導入前後で専攻医の配置に大きな変化は起きなかった」と大川氏は説明する。

 さらに「本来、議論すべきは研修や教育の質。その担保のために、初期臨床研修のために用意された臨床指導医講習会の受講を専門研修の指導医にも義務づけて教育技法を学んでもらったり、専攻医への形成的・総括的評価方法をどう担保するのかといった話を議論すべき。だが、一人前ではない専攻医の配置ばかりが議論の俎上にのぼり、研修の質に関する話は一切されていない。しっかりと研修・教育の質を担保するためにも今後、そうしたことについて検討すべきと考えている」と大川氏は話す。

研修期間はあえて「3年9カ月」に

 整形外科領域の研修期間は3年9カ月。他の領域が3年や4年とする中で、この研修期間に設定した理由を、「新制度でも専門医試験を含めて4年の研修期間と考えていたが、日本専門医機構から、研修期間を終えなければ専門医試験の受験を認めないと言われたため、研修期間を45カ月に短縮した」と説明する。

 日本整形外科学会の専門医試験は毎年1月に実施されている。これは次の4月から専門医として勤務ができるようにするためだ。3年の研修期間は短すぎるが、4年の研修を積んだ後に専門医試験を受けるとすると、試験を受けるのはその翌年の1月になり、試験を受ける時期が非常に遅くなる。「研修期間としては中途半端なように見えるが、試験に受かれば、研修を終えた3カ月後に専門医資格を得て勤務できるようにした」と大川氏は話す。

 専門研修で必須としたのは40カ月。以前の日本整形外科学会が認定していた専門医制度では、大半の医師がサブスペシャリティー領域の専門医資格を取得するため、必須の研修期間の後にそれぞれが取得したいサブスペシャリティー領域の研修を積める期間を8カ月設けていた。この自由選択を認めていた期間を3カ月縮め、45カ月の研修期間にしたのだ。「研修を4年間積めば、一般外傷であれば1人で対処できるレベルになる。だが、関節鏡や脊椎・脊髄、人工関節の手術を1人で担えるレベルにはならない。専門医資格を取得後、さらにサブスペシャリティー領域の研修を積むことを想定して研修期間を設定した」と大川氏は言う。

口頭試験は免除の方向で検討中

 専門医試験については、「新制度の研修プログラムで研修を受けた専攻医は、口頭試験の免除を考えている」と大川氏。これまでの専門医試験では、一定の症例経験に加え、筆記試験と口頭試験を課していた。口頭試験を実施していたのは、受験者がどのような研修を積んできたかが分からなかったので、適切な研修を受けてきたかを評価するため。口頭試験は1人30分とし、診察や手術の動画を示しながらその説明を求めたり、受験者が提出したケースレポートに対する質疑応答をしたり、症例に関するスライドを提示して、思考過程を説明させるといったことで評価をしていた。

 新制度では、研修プログラムの中で、初期研修で活用されている「臨床研修評価システム EPOC」のような形で、研修中の専攻医に自己評価をさせ、指導医がチェックして必要に応じて指導する仕組みにしている。研修の過程は、全て日本整形外科学会のデータベースに研修の記録として登録し、適切なタイミングで丁寧な指導がされているのかなどを確認できるようにしたという。「実際に研修や指導内容を記録するデータベースが活用され始めてからの判断にはなるが、指導医が適切な評価と指導を随時行い、その研修記録が確認できれば形成的な評価は4年間で十分できるはずと考えている」と大川氏は話している。