患者の波が途切れる。積み上がった薬歴に、僕はため息をつき、周囲を見渡す。すっかり日が暮れていた。まだ、17時だというのに。季節が夜の長さを変えているようだ。外の冷たい風を遮っている薬局の大きな窓は、僕の視線を外に逃がすことなく薬局の中に閉じ込める。窓に映るあゆみさんは、広域処方せんを手に何やら調べ物をしているようだった。

 「ケンシロウさん、この泌尿器科の処方なんですけど」。あゆみさんはケンシロウに処方せんを差し出す。50歳女性へのエブランチルカプセルとベサコリン散、α1遮断薬とコリン作動薬の併用、神経因性膀胱などによくある処方だ。「ベサコリンはわかるんですよ。もう一つのエブランチル、これってなんか特別なんですか? なんでこれは女性にも使えるんですかね?」

 「エブランチルは日本で唯一、神経因性膀胱の適応を持つα1遮断薬だからね。女性の排出障害に使えるんだよ」。ケンシロウはあゆみさんの後ろで腕組みをしながら得意げに応じている。「ちなみに、ベサコリンは膀胱排尿筋の収縮力の低下に対しての処方だよ」。

女性の神経因性膀胱、なぜエブランチルだけ?の画像

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